私が驚いたように、皆さんもきっと驚くだろうと思う。
富士山を望む美しい山梨県の、とあるところに、「犬捨て山」と呼ばれる場所が存在する。
一つあるということは、たぶん日本中にそのような場所が点在しているのではないだろうかと、私は想像してしまう。
もちろんそのような聞くも恐ろしい場所、はじめから存在しているわけではない。
山梨の場合、そもそもはなにやらとんでもない地主が土地がらみの問題に犬たちを利用したようで、多数の犬をそこへ放置したのが始めらしい。(そうすることで意図的に地価を下げようというもくろみだったのか)
そこへ、これまたとんでもない人間たちが、まるでゴミを収集場所に捨てる感覚で、次から次へと犬を置き去りにしていった・・・その結果だ。
今から16年前、その山に置き去りにされた犬たちの惨状を目のあたりにし、「見て見ぬふりは出来ない」と今日まで長年にわたり、犬たちの救済活動をされてきた、一人のオーストリア人がいる。
その人がマルコ・ブルーノさんだ。
はじめて山に案内していただく日、現場に一番近い高速のインターでマルコさんと待ち合わせをした。
そのときに見たマルコさんの車の状態で、どのような場所か少し想像は出来ていたが、実際ものすごいところであった。
山に入る前のところに自分の車を停め、マルコさんのワンボックスに同乗させていただいた。
中には人なつっこいマルコさんの愛犬が2匹乗っており、私が乗り込むと同時に一匹が膝に両足と頭をのせてきた。かわいかったな。
マルコさんの運転でいざ山道をのぼりだす。
うっかりボケっと口を開けていると舌を噛み切りそうな凸凹道に、体ごとシートの上でバウンドする。
しかしワンコたちは絶妙にバランスをとっている。スゴイな!
轍がひどく、一度はまったらどうにもやっかいなことになりそうだ。
あちこちから飛び出した枝がガシガシ車をひっかく。
申し訳ないが、正直自分の車でなくてよかったと思った。
それでもなんだかそのときに、きっとまたここへ自分で来る、と予感していたので、マルコさんの運転を観察しながら、その山道の攻略法などを頭でイメージしていた自分を記憶している。
着いた・・・。
・・・・。
(絶句・・・)
ものすごいところに、ものすごい数の犬であった。