2010/07/06

アシジのフランシスコ St. Francis of Assisi

 
小鳥の説教 St. Francis Preaches to the Birds
                  (人と思想-マザーテレサ 和田町子 著 より)



マザーテレサは、一三世紀イタリアのアシジの人フランシスコのものといわれる「平和の祈り」を「神の愛の宣教者会」および「マザーテレサ協労者国際協会」の会員たちの一致の絆として選びだした。またマザーは「地上における完全な喜び」についても、アシジのフランシスコと思いをひとつにしていた。

ではフランシスコはどのように生きた人であったのか。
マザーがこれほど「気が合う」聖人を簡単に紹介してみよう。


2000年このかた、キリストに倣って聖者となった無数の人びとがある。その人びとの生き方はひとつの壮大なオーケストラを構成するさまざまな楽器の演奏ぶりにたとえることもできるのだが、聖人たちは本当にさまざまな生き方で神を賛美してきた。そのなかで聖フランシスコの生き方はきわだった特色をもっている。
 
フランシスコは明治以来、日本で最も親しまれた聖者の一人である。「ブラザー・サン、シスター・ムーン」をはじめ彼を主人公とする映画は多くの観衆を集めたし、<小鳥の説教>の話もよく知られている。

チェスタトンの表現を借りると、フランシスコが鳥のたくさんさえずっている森で説教しようとした時、彼は礼儀正しい仕種をして「小さな姉妹たちよ、もしあなたがたが、今おっしゃりたいことを終えたのなら、今は私のほうが話を聞いてもらわねばならぬ時なのです。」と語った。すると、あらゆる鳥は静かになった、という。この話はふつう、無垢の聖者の心が無心の小鳥にも通うというメルヘンめく物語として受けとられている。

たしかに<小鳥の説教>は、フランシスコの面影をいきいきと示すものであり、そうした事柄そのものとしては、われわれには、フランシスコの生涯の単に一挿話にすぎないように見える。しかしながら、古くからの伝記はいずれもこれを重大にあつかっている。
実際にジョットー以降、フランシスコの生涯を描いた壁画にはほとんどかならずこれがとりあげられている。聖者の生涯に行われた奇跡という意味においてである。

近代の人びとには、別の意味で、別の角度から、これを見る解釈がある。つまり、これは、フランシスコの愛が、人間だけでなく、一切の生物に、さらに全自然に及んでいるということの表現であるとする見方である。

そのような印象からフランシスコはひたすら春の光のようにおだやかで慈愛にみちた天衣無縫の人と受けとめられて、人びとは、怒らず争わず無抵抗の博愛主義者であるフランシスコ像をいだくことになる。




ジョットのフレスコ画


小鳥に説教するアッシジの聖フランチェスコ
Saint François d'Assise, la prédication aux oiseaux





 
 
 
 

2010/07/05

屠殺所  中原中也  (原文)

 

屠殺所に、

死んでいく牛はモーと啼いた。

六月の野の土赫(あか)く、

地平に雲が浮ゐていた。



道は躓きさうにわるく、

私はその頃胃を病んでゐた。



屠殺所に、

死んでいく牛はモーと啼いた。

六月の野の土赫(あか)く、

地平に雲が浮ゐていた。


                    中原中也






牛の輸送トラック


 




 
 
 
 

2010/07/02

The Hub of Animal Trafficking: Iraq

 
密輸入の「ハブ」と化した動物園 -イラクー


ごみ捨て場さながらの汚い檻に入ったヒヒを、少年たちが寄ってたかって棒でつつくーイラクの動物園では日常的な出来事だ。

「動物は不潔な場所にすし詰め状態にされている」と言うのは、イラク北部クルド人自治区得るエルビルのグルカンド動物園を訪れた、環境保護団体ネイチャー・イラクのアンナ・バックマン。

「檻に動物の説明が貼ってあったとしても、間違った種名が書かれていることが多い」。動物園とは人々の教育と絶滅危惧種の繁殖のためにあるのだとしたら、ここはどちらの役割も果たしていない。

この動物園にいる動物の大半がアフリカやタイから密輸入され、国内のコレクターに売られている。

ネイチャー・イラクの調べでは、グルカンドは野生動物の違法取引のハブと化している。先日は、あるバイヤーが8万ドルの売値を付けられた赤ちゃんライオンの値引き交渉をしている現場が目撃された。

国内種であっても、野生動物やその肉が売買される地元の闇市場から入手したものだ。
「人権侵害が起きやすいイラクでは、動物の命も軽く扱われてします」と、ネーチャー・イラクのオマール・ファドヘルは言う。
「こんな環境で育った子供たちにとって、食料や楽しみのために動物を殺すことなんて何でもない」


                          -Newsweek- 6/16/2010